中世社会像の現在
木村茂光『日本中世の歴史1・中世社会の成り立ち』(吉川弘文館、2009年)読了。読み終えてからしばらく経っていますが、中世史に特化したシリーズの刊行ということで、やはり触れておくべきかなと。
このシリーズが刊行されると聞いて、まず浮かんだのはやはり、中央公論新社が出した「日本の中世」のシリーズ。とりわけ総論的な位置づけにある、石井進『日本の中世1・中世のかたち』(中央公論新社、2002年)をどのようにして乗り越えるのか、といったところへの期待です。
やはりその辺を意識されている様子が、「あとがき」で触れられているところから窺えました。また、石井さんの描いた中世像に違和感をお持ちであったことも書かれています。
どの点に違和感があったのか。はっきりとは書かれていないのでわかりづらいのですが、どうやら、中世の時代像の理解について、外在的な要因(対外関係=東アジア世界のダイナミズム)に大きく拠っているような叙述になっている点に批判の矛先がありそうです。それゆえか、対外関係に絡んだ叙述は、最後に控えめに登場する程度です。
一方、本書では、日本社会の持つ内在的な要因を重視する叙述を目指した、ということになりますでしょうか。この辺りは、村落の住民の動向に視点を置いた著者の叙述が面目躍如といったように思いました。とりわけ、中世前期における民衆運動については、私自身あまり詳しくないこともあって、とても読み応えがあります。
近年は特に中世史の研究状況は細密化していて、すべてを追うのが相当困難になっています。もちろん完璧とは言えないかもしれませんが、それらの最新の研究成果を積極的に取り込もうとする意欲も感じられて、中世史の「現在」を辿るためにも有益だと思います。
…まああんまり褒めすぎるとかえって胡散臭いので(笑)、この辺で。
細かいことを言うならば、所々あった基礎的なルビの誤りは気になりました。あと、城下町の叙述のところで、「安芸毛利氏の山口」(p.153)というのはいくらなんでも違和感があります(勘違いされたのでしょうか?)。
好評のようで増刷されるそうですが、この辺について修正されることを希望いたします。
![]() | 中世社会の成り立ち (日本中世の歴史) 木村 茂光 吉川弘文館 2009-05-15 by G-Tools |
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