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2017.09.16

リスボンでの学会報告

Lisbon_1Lisbon_28月末から9月初めにかけて、EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)の国際学会のため、リスボンへ行ってきました。応募したパネルが幸運にも採択されました。

報告は日本語でもokということで気軽な気持ちでいたのですが、諸々の事情により結果的に英語で報告することになり(討論は結局日本語にしてもらいましたが)、私の報告はしどろもどろに(笑)。とはいえ、聴衆のみなさんからは意を汲んだ質問をいただいて、少しほっとしました。私の語学力はまだまだ初心者のレベルで、忸怩たる思いです。

学会では様々なイベントも用意されており、この辺りは日本の学会とは違った雰囲気を体感できました(その分、参加費が高いのではありますが)。合間を縫ってリスボンやその周辺の史跡も巡見し、満足した“出張”になりました。

国際学会(英語)での報告はこれで2回目ですが、まだまだ修行が足りません。それとともに、そろそろ英語で原稿を書く必要があるだろうなあ(名刺代わりとして)と思うものの、それを可能とする実力を身につけるための努力はまだまだこれからです…。

それにしても、リスボンは素晴らしい所でした。ヨーロッパやアメリカなどからバカンスに訪れる人が多いのもわかります。晴れると暑いものの、湿度が低くて過ごしやすかったです。坂がきつくて歩き回ると結構疲れますが。

2017.09.09

【受贈】『琉球史料学の船出』

黒嶋敏・屋良健一郎編『琉球史料学の船出―いま、歴史情報の海へ』(勉誠出版、2017年)を、編者の黒嶋さんのほか、執筆者のHさん・Sさんの連名で受贈。ありがとうございます。

近年では化学分析も積極的に採り入れつつ、文書の形態や物質的側面からその背景を探る研究が深まっており、それによって新たな知見が得られるようになってきました。ただし琉球関係史料についての分析はまだ始まったばかりといえ、本書がその起爆剤になる研究ということになるのでしょう。

必ずしも琉球に直接関わらない論考もありますが、多くの発給文書自体のみならず、覚書などの記録類(二次史料)や、外交文書の綿密な分析などは、文書を扱う際の知見を多く与えてくれるものでした。私自身はむしろこの方面には疎いというか無頓着なので、自らを戒めたいところです。

示唆的な見解はいくつもあったのですが、黒嶋さんによる島津氏が発給した琉球渡海朱印状の分析の中で、島津氏が発給主体を組織(役職)ではなく個々の人格に求めようとしたとし(発給者の署名を要求したことから)、「国王や三司官という地位・組織によって文書を出している琉球と、当主や老中という個々の人格による俗人的(かわと注:属人的?)な支配関係を前提とする島津氏側(日本側)の、認識のズレを示すものとして興味深い」(322ページ)とする点は、私も興味深いところでした。

4585221751琉球史料学の船出―いま、歴史情報の海へ
黒嶋 敏・屋良 健一郎編
勉誠出版 2017-05-25

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2017.08.16

【受贈】『交換・権力・文化』

桜井英治『交換・権力・文化―ひとつの日本中世社会論』(みすず書房、2017年)受贈。ありがとうございます。

待望の論文集、というべきでしょうか。中世後期日本を中心とした贈与の社会的・経済的意義については、一般向けに新書がすでに刊行されていますが、本書はそのベースとなった論文集といってよいでしょうか。

特に室町期に発達した贈与慣行について、頻繁に用いられた折紙(贈与する金品の目録)の機能に注目した論考や、16世紀にかけての貨幣流通の動向など、以後の研究に大きな影響を与えた内容が多く含まれています。1570年代の「びた」に関する新稿もあり、興味深く拝読しました。

さて、簡略ながら、読後に二つの点で自らの関心に副って思うところがありました。

まず一つ。筆者も触れているように、15世紀に折紙の贈与が盛行した背景の一つに、現銭の調達の困難さがあったことが想定されています。この点について思い当たるのは、この時代は為政者周辺で空前の活況を呈した一方、経済の潤滑化に欠かせない貨幣(銭)の供給はむしろ頭打ちになったと考えられるため、特に京都周辺で銭不足が慢性化しつつあった可能性が考えられることです。そうであるならば、折紙が流行ったのは、かかる事情からも説明できるのではないかな…などと思ったりしました。

もう一つは、新稿の1570年代の「びた」について。ここで筆者は先行研究における先進性を再発見しています。この点は私も反省を含めて改めて勉強になりました。その上で近年の議論について考えるのは、結局「びた」というのははじめから低銭(元々価値の低い銭)であったとの見解が最近は有力になりつつある、という点です。
この点について思い返すと、想起されるのは、グレシャムの法則(「悪貨は良貨を駆逐する」)が当時の貨幣経済に作動したかどうかという議論が戦前にあったことです。これまでの研究史では、グレシャムの法則が作動しなかったとする立場が定説となっていましたが、「びた」が低銭=悪貨だとするならば、この問題を改めて問い直す必要があるのかもしれません。

後者は本書の内容とすぐさま関わる内容ではないのですが、本書を通じて、改めて研究への示唆を得られました。(実際にこういう論点を今後掘り下げるかはわかりませんが…。)

4622086115交換・権力・文化――ひとつの日本中世社会論
桜井 英治
みすず書房 2017-06-10

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2017.07.23

【受贈】『今川氏研究の最前線』

日本史史料研究会監修・大石泰史編『今川氏研究の最前線―ここまでわかった「東海の大大名」の実像』(歴史新書y71、洋泉社、2017年)を、執筆者のKさんより受贈。ありがとうございます。

今年の大河ドラマと深く関わる戦国大名今川氏をテーマとしたものであることは言うまでもないことですが、現時点での今川氏の研究成果について解説する内容となっています。

本書の冒頭にもあるように、今川氏は戦国大名としては滅亡した経緯がよく知られているため、どちらかというと地味というか、世間ではあまり注目されない一族であるような印象がします。
ところが、戦国大名研究においては、むしろ長らく戦国大名の典型の一つとして多くの研究成果が蓄積されてきました。中でも今川氏親が制定した「今川仮名目録」と、後に今川義元が追加した条々は、戦国大名によるいわゆる「分国法」の制定の代表例として著名ですし、その内容も極めて重要なものとして高く評価されてきました。

このほか、東海地域の戦国大名として君臨した歴史を持っているため、言うまでもなく織田信長や徳川家康、そして彼らの被官となる国衆たちなど、江戸時代にかけて領主として生き残った多くの一族の歴史にも大きな影響を与える大名でもありました。(その代表の一つが井伊氏なわけですが。)
そんな今川氏が大名としていったい何をしたのかについて、これまでの研究成果を踏まえながら、多岐にわたって具体的に説明が施されています。

ただ、率直に言うと、内容はかなり高度で、この時代に対するかなりの興味あるいは知識がないと、すべてを読みこなすことは難しいように思います。さしずめ日本中世史を専攻する学部生レベルといったところでしょうか。初めて興味を持った初学者クラスでは、歯が立たないかもしれません。もっとも、そのため読み応えは十分ですので、チャレンジする人がたくさん出て欲しいと思います。

4800312639今川氏研究の最前線 (歴史新書y)
日本史史料研究会監修・大石 泰史編
洋泉社 2017-06-02

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2017.07.14

【受贈】『織豊期研究の現在』

織豊期研究会編『織豊期研究の現在〈いま〉』(岩田書院、2017年)を、執筆者のMさんより受贈。ありがとうございます。

名古屋を中心に活動する織豊期研究会が発足して20年を記念して編集されたもので、元は記念のシンポジウムをベースとしています。私も当日は出席したので、当時の報告や議論が(断片的ではありますが)蘇ってきました。

織豊期という時代区分は今では一般的ですが、当会の活動がその認知の拡大に大きく寄与したといえるでしょうか。中世と近世の狭間にあり、そのため業界のニッチになりがちだった時代だったような印象がありましたけれども、今や活発な議論が交わされていて(私もその末席を汚していますが)、そこに果たした当会の役割の大きさを改めて認識します。

本書での議論も多彩で、織豊期研究の広がりを実感することができますが、長らく議論されてきた積年の課題の中には、いまだ決着をみない論点もあり、それも浮き彫りしている感もしました。私がそれに貢献できる自信はありませんが、本書より多くの示唆を得て自分なりにがんばっていきたいところです。

4866029951織豊期研究の現在(いま)
織豊期研究会編
岩田書院 2017-06-01

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2017.06.11

【受贈】『大日本史料』第十編之二十九

『大日本史料』第十編之二十九(東京大学史料編纂所、2017年)受贈。ありがとうございます。『大日本史料』をいただくのは初めてです(実は自分で買ったこともありませんが…)。

対象となるのは、天正3年(1575)3月から5月。織田信長の徳政や、今川氏真の上洛と信長の前での蹴鞠、そして武田勝頼の三河侵攻と鳥居強右衛門の処刑などの事件が含まれています。

徳政に関しては、抜粋ながら上賀茂神社の算用状が掲載されており、先日の某研究会で話題になった「中銭」が記載された史料もありました。このほか、個人的には、二条昭実に織田信長の養女さごが輿入れする記事で、村井貞勝とともに日乗が供奉していることが印象に残りました。

実のところ、政治史にはあまり詳しくはない方なので、史料を熟読して何か新しい発見ができればと思います。

4130904795大日本史料 第十編之二十九: 正親町天皇 天正三年三月―同年五月
東京大学史料編纂所
東京大学史料編纂所 2017-05-25

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2017.05.07

【受贈】『織田信長 不器用すぎた天下人』

金子拓『織田信長 不器用すぎた天下人』(河出書房新社、2017年)受贈。ありがとうございます。

織田信長やその政権に関する研究書や一般書を立て続けに刊行しておられますが、今回は信長の「外交」から内面に迫ろうとするものとなっています。
具体的には、家臣や同盟相手による「裏切り」の要因をつぶさに検証する内容となっています。そこで検討された結果については、私は説得力のあるものと感じました。

本書は決して簡単な内容ではないのですが、非常に読みやすくなっており、筆力を感じました。私もこれくらいわかりやすい文章を書けるとよいのですが…、精進が必要ですね。

本書を読んで個人的に印象に残ったのは、信長よりも徳川家康と武田信玄との関係でした。家康は若い頃から「食えない奴」だったんだなあ、と(笑)。そうでなければ「天下人」にはなれなかったのでしょう。
すでに読んだ人の間では、信長と上杉謙信との関係のたとえ話が話題になっているようですね(笑)。

4309227007織田信長 不器用すぎた天下人
金子 拓
河出書房新社 2017-04-22

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2017.04.10

寧波

Ningbo_1先月、寧波へ行ってきました。大学院時代のゼミのメンバーとの間でかねてより計画していた旅で、なかなか実現できずにいたのですが、やっと実現できて感慨ひとしお。しかも私は寧波は初めてだったので、やっと念願が叶った心境でした。
ただ、行ってみるとこのように完全に都市化しています。当然といえば当然なのですが。

Ningbo_6Ningbo_5日中交流の痕跡を探して廻ったわけですが、残念ながら実見してそれとわかるようなものは遺されていません。左写真の霊橋は、川に囲まれたかつての寧波へ入る唯一の橋だったもので、その手前にある川岸が、各地からの物資を荷揚げする場所だったとされています。
留学で訪れた道元の祈念碑が近くにありますが、工事エリアになっており近づけず。

右写真は、その近くの日本人が多く居留した地に建つ境清興法寺跡の石碑。この辺りが寧波の乱の勃発地と目されています。

Ningbo_2時間が限られていたので少しだけですが、舟山にも行きました。これは舟山のごく手前にある瀝港(烈港)に建つ「平倭碑」。この辺りは、双嶼へ移る前に王直が拠点とした場所で、その鎮圧を記念して建てられたものです。石碑には多くの碑文が刻まれていましたが、ガラスで反射してまともに写せそうにないので、接写は諦めました。

Ningbo_3Ningbo_4中世の日本から留学僧が訪れた著名な二つの寺院。左は阿育王寺の開山堂。かつて、重源が周防の木材を寄進して建てられたと伝わっているもので、今のものはそうではないかもしれませんが、中に入ってみると確かに様式は東大寺大仏殿に似ている気がしました(専門じゃないので自信はないですが)。

右は天童寺。栄西も訪れた寺院ですが、道元が修行した所として知られています。日本からの曹洞宗関係の訪問者が多いらしく、境内にはその記念の品々が展示されている場所もありました。

Hangzhou寧波の後は杭州へ。こちらも時間が十分ではなく、霊隠寺の石仏を見学したり南宋時代の都市の遺跡をちょっと見たりした程度でしたので、再訪したいところです(カメラの調子も悪くなったのが残念)。写真は世界遺産の西湖。天気がいまいちでしたが、かえって水墨画のような雰囲気になってよかったかもしれません。

2017.04.03

2017年度

光陰矢の如し。春休みもあっという間に終わり、新年度となりました。

私の環境は特に変わりませんが、いろいろな形で環境の変わる方々におかれましては、新たなる前途が拓けますことをお慶び申し上げます。

昨年度は著書を出すことができたものの、その後の研究の進捗は今ひとつで、そろそろ始動したいところです。ただ、今年度は新たに勤務先の近所の某大学で1コマ受け持つこととなり、前期は講義なのでその準備も進めねばなりません。専門の話が中心になるので楽しみではあるのですが、ペースをつかむまでしばらくドタバタしそうです。

また、夏には海外で報告をする予定になっています。日本語でも可のようですが、討論者の都合上、英語で報告をすることになるかもしれません。報告自体は新しいネタを準備するというより、これまでの研究のダイジェストのような話になるので、準備はそれほど難しくないものの(報告時間は20分しかないし)、やはり討論がなあ…。英語の勉強をがんばります。

さらに、秋には国内外の貨幣史研究者の前で喋ることになっており、交流が広がることはとても楽しみなのですが、報告自体は戦々恐々(笑)。こちらも内容はダイジェストで。

とまあ、近年は講演などのような仕事が徐々に増えてきましたが、過去の貯蓄で食っていけるほどの蓄積には程遠いですので、研究活動が疎かにならないよう気を引き締めたいと思います。

新年度も宜しくお願いします。

2017.03.22

【受贈】『さつま人国誌 戦国・近世編』3

桐野作人『さつま人国誌 戦国・近世編』3(南日本新聞社、2017年)受贈。ありがとうございます。

長年にわたって続けられている新聞での連載をまとめたもので、主に戦国期の島津氏を中心にまとめられています。私は島津氏や薩摩・大隅の戦国期の動向については全くの不勉強ですので、知らないことばかりで勉強になりました。元々は新聞に書かれていることもあり、とても読みやすいです。

戦国期の鹿児島の歴史を学ぶためのみならず、写真なども多く掲載されており、史跡ガイドとしても有用ではないかと思います。私は鹿児島県の史跡をあまり見ることができていないので、いずれ訪れる際には本書で事前に予習してから行きたいと思います。

4860742478さつま人国誌 戦国・近世編 3
桐野 作人
南日本新聞社 2017-03

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«単著『中近世日本の貨幣流通秩序』を刊行しました

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