2019.06.24

【受贈】『鳥居強右衛門』

金子拓『鳥居強右衛門―語り継がれる武士の魂』(平凡社、2018年)受贈。ありがとうございます。

本書では、長篠合戦の際、武田方に捕縛されながら、長篠城に籠もる奥平氏の軍勢に向けて織田軍の援軍が来ることを伝え、「逆さ磔」にされたとされる人物として語り継がれている鳥居強右衛門や、「逆さ磔」をデザインにした旗(背旗)を作成し後世に伝えた落合左兵次とその子孫について検証しながら、「逆さ磔」の伝説が生まれた経緯やその後の変容を分析しています。
鳥居強右衛門は『甫庵信長記』や『三河物語』といった二次史料にみられる人物で、江戸時代初期からある程度名前を知られた人物だったようですが、出自がまったくわからない不思議な人物でもあります。なぜこのような人物が歴史に名を残したのかについても、詳しく説明されており、かつ説得的です。

その他あらゆる論証は緻密で、かつその過程をわかりやすく説明しており、内容はもとより、史料を駆使した分析の手法を学ぶためにも参考になる一冊となっているのではないかと思います。一方、長篠合戦の経緯についても最初に詳しく述べられていますが、この辺りの歴史に詳しくない人にとっては、読みこなすのは少し努力が必要かもしれません。

さて、その落合左兵次の実像をめぐる検証については、「恐るべき結論」(136頁)と自ら述べられているように、意外な結論に辿り着きます。また、「逆さ磔」として知られていますが、果たして「逆さ」だったかについても、現在に遺る旗を実際に分析して検証しています。

私はかつて科研等の調査でこの背旗について調査に立ち会わせていただいたことがあり、その時の記憶がただちに蘇ってきました。この科研では私は何も貢献が出来ずまことにお恥ずかしい限りなのですが、史料とモノに加え、伝説(由緒)の検証から新たな歴史像を解明する手法は、大いに勉強になりました。

 

鳥居強右衛門:語り継がれる武士の魂 (中世から近世へ)
金子 拓
平凡社
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2019.06.01

【受贈】『清須会議』

柴裕之『清須会議―秀吉天下取りへの調略戦』(シリーズ実像に迫る17、戎光祥出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

タイトルは清須会議ですが、会議自体は一瞬で終わるので(笑)、本能寺の変へ至る過程から織田信雄が死去するまでの織田・豊臣政権(と江戸幕府成立後)の政治情勢について、多くの図や写真などを交えながら解説した内容となっています。わかりやすく概説的に説明がされており、かつビジュアル面で充実しているので、初学者のみならず、おおまかな政治情勢について確認したい時などに有用な一冊ではないかと思います。

このシリーズの狙いでもあると思いますが、本書に登場する城跡や史跡の写真を見ると、その地を訪ね歩いてみたくなります。関連史跡をめぐる時に携行するのもよさそうです。

清須会議 秀吉天下取りへの調略戦 (シリーズ・実像に迫る17)
柴裕之
戎光祥出版 (2018-09-27)
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2019.05.28

【受贈】『戦国の城の一生』

竹井英文『戦国の城の一生―つくる・壊す・蘇る』(歴史文化ライブラリー475、吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

戦国時代の「城の一生」、つまり築城から整備、維持管理、そして廃城、はたまた復活(再利用)に至るまでの様子を、文献史料から具体的に復元しています。さすがというか、全国各地の城の事例を網羅的に検出し、興味深い事例を多く取り上げてわかりやすく城の実態について解説がほどこされています。

個人的に興味深かったのは、城の運用規定ともいえる「城掟」を網羅的に蒐集して分析しているところでした。私は「城掟」について詳しいことは知らなかったのですが、様々な規定を目にして、城の運用にとどまらず戦国期の社会事情が垣間見える内容も多いことがわかりました。今後の参考になりそうです。

城跡の実像については、発掘調査や縄張研究によっても大きく進展してきたわけですが、文献史料にも多くの論点を見いだせることがわかりました。歴史学においては、現在では異なる研究分野との協業が重要なテーマになっていますが(城郭研究の場合、地理学的な分析も視野に入るでしょう)、改めて文献史料に立ち返る重要性も学んだ気がします。

 

戦国の城の一生: つくる・壊す・蘇る (歴史文化ライブラリー)
竹井 英文
吉川弘文館
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2019.05.01

【受贈】『薩摩の密偵桐野利秋』

桐野作人『薩摩の密偵桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実』(NHK出版新書564、NHK出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

私は大学入学後に戦国期への関心が高まるとともに幕末維新期への興味が急速に薄れたため、恥ずかしながら知識がほとんどありません。私の幕末維新期の人物イメージといえば、大学入学前によく読んでいた司馬遼太郎の小説や、1990年のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」で止まっています。本書の主人公である桐野利秋(中村半次郎)についても、猪突猛進的な血の気が多い藩士の一人というイメージでいました。

本書は、そのようなイメージを覆す内容となっています。私の持つイメージは池波正太郎の小説『人斬り半次郎』が与えた影響のようですが、実際の桐野利秋は、幕末期には薩摩藩の密偵として各種の情報収取(そして時には暗殺)を行う役回りを担っており、しかもかなりの手柄を挙げたようでした。そのような役回りのためか、藩内外様々な人物と接触しており、かつそれが史料から復元できることに非常に興味深く感じました。さすが、19世紀後半ともなると、ここまで史料があるのかと感嘆します(もちろん、史料の博捜という大変な作業を経て読者はその恩恵を受けるわけですが)。幕末の政治史について近年の研究をしっかり追えているわけではなかったので、この辺りの詳細な叙述は大いに勉強になりました。

終盤の西南戦争の描写もドラマチックで、この辺りは事実を淡々と述べがちな研究書とは一線を画する醍醐味です。参考文献リストも充実しており、この時代の入門書としてもおすすめしたいです。

薩摩の密偵 桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実 (NHK出版新書 564)
桐野 作人
NHK出版
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2019.04.26

「みらい翻訳」を使ってみた

オンラインの翻訳サービスである「みらい翻訳」を試しに使ってみました。

私がかつて発表した原稿を翻訳にかけてみたところ、次の通りでした。

「戦国期の関東において永楽銭が特別な価値を与えられるようになったと見られる点(本稿ではこれを精銭化と呼ぶ)については、古くから認識されていた。従来は後北条氏の銭貨流通政策によって創出されたものと捉えられ、その背景に、太平洋海運による伊勢商人の深い関与も想定されている。」(拙稿「16世紀後半関東の「永楽」と永楽銭」より)

"It has long been recognized that Eiraku-sen coins were given special value in the Kanto region during the Sengoku period (This is called Seisenka in this article.). Traditionally, it was considered to have been created by the Gohojo clan's policies on currency exchange, and it is also assumed that Ise shonin (merchants in Ise) were deeply involved in the Pacific Ocean Shipping.”

これはすごい。私の英語力では、特殊用語を除けばほとんど書き直せる所がない。
文章を英語で書くことは必要なくなる時代が、もうすぐそこまで来ている気がしました。コミュニケーションのために英語を学ぶことはこれからももちろん必要なのですが。

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