【受贈】『中世武士団構造の研究』
田中大喜『中世武士団構造の研究』(校倉書房、2011年)受贈。ありがとうございます。
本書は主に鎌倉から南北朝期にかけての「武士団構造」を研究したものです。武士団とは「武士という社会集団」のことであり、その存在形態を究明することによって、武士が支配階級として君臨した中世社会の特質が明らかになるという問題関心が主眼となっています。
その分析視角としては、研究史では領主制論が中心となっていたわけですが、近年では領主制論を相対化する動向を受けて、大きく三つの分析軸を設定しています。それらは「俗縁的結合と惣領制」「地域社会のなかの武士団」「高権力とイエ支配権」であり、それぞれのテーマに分けて分析がされています。
そのうち「地域社会のなかの武士団」というのは若干抽象的なので付言すると、地域社会の結節点となる場(いわゆる「都市的な場」などの流通拠点や流通路)への武士団の関わりを具体的に明らかにすることによって、地域社会と武士との関係を支配・被支配という関係に限定されない形で位置づけようとするものと理解されます。
個人的には「人返法」を取り上げた第三部第四章が興味深かったです。中世社会における百姓は去留の自由があるのかどうかについて長い議論があり、近年では去留の自由が一般的だったという理解が浸透しつつあります。しかしそうではなく、人返法(逃散・逃亡の自由の否定)が普遍法として社会に浸透しており、年貢未進等による逃散に対処する債権回収の手段として適用されたと指摘しています。
民衆に対する債権回収が最終的に人身売買(身売り)にまで及ぶことは江戸時代ではよく知られている話で、史料が多くはないとはいえ中世にも一般的にそのような慣行が存在した可能性の高いことは予想されます。それだけに、債権者による債務者の身柄確保が、重要な債権回収手段として法的に担保されていたとする点は説得力があります。ただ、債務者の身柄確保が唯一の債権回収手段ではないことも確かで、いわゆる「壊取(こぼちとり)」などの資産回収の強制執行も中世では広く認められているところであり、それらの法慣習の運用との関係がどうなっていたのか、などといろいろと考えさせられるところです。
本書の中心の論点とは違うところで長々と述べましたが(笑)、中世における武士あるいは領主を扱った最新の研究成果として広く読まれることを望みます。
![]() | 中世武士団構造の研究 (歴史科学叢書) 田中 大喜 校倉書房 2011-08 by G-Tools |









































































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