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2016.04.11

【受贈】『中世的九州の形成』

小川弘和『中世的九州の形成』(高志書院、2016年)受贈。ありがとうございます。

この書名を見ると、当然ながらあの古典的名著が浮かんで来るわけですが(笑)、この書名に決まった経緯は「あとがき」に書かれています。ともあれ本書の最も重要な指摘は、まさに終章の末尾にある「南・北の周縁こそ、中世への胎動の場だったのだ」(247頁)であろうと思います。

何をもって中世という時代を定義するのか。これは簡単なようで難しいというのが実情ではないでしょうか。いや、むしろかつてはしっかりした定義があり、それは封建制社会を基底とした、領主制と荘園制が展開した時代、ということでした。しかし今や、この定義を中世という時代に措定出来るのか、それ自体が疑問視されることもあります。あるいは、こういった議論そのものが全く顧慮されなくなってきた(単なる機械的な時代区分としての意味しか与えない風潮になった)、とも言えそうです。

そこで本書が措定する「中世的」とは何かを確認すると、(正しく真意を把握出来ているか不安ですが)ひとまずは荘園制の成立した世界と認識しているように読み取れます。ただし、それは単なる旧来の荘園制理解に留まるものではなく、「列島の範囲もこえた交通関係の伸展・深化に対する権力的編成として荘園制を捉えようとする」(10頁)とあり、土地制度の一形態である狭い意味での荘園制ではなく、国家権力の構造、あるいは都鄙間関係の編成といった側面、および国家としての領域の形成過程にも影響を与えた制度と捉えているものと理解しました。

そして本書で重要なのは、「国家としての領域」という問題です。九州は日本列島において東アジア世界に最も近いことは言うまでもないですが、その周縁的位置ゆえにこそ、「国家」の形成においては先鋭的な軋轢を生み出す場となる、ということになりましょう。ある意味現代社会でも当たり前な話なのですが、一国史的な理解をしがちな前近代社会に対するイメージにおいては、この点はむしろあまり顧みられることもなかったような気がします(少なくとも私は)。そういう問題関心をもって叙述された後に、周縁が「中世の胎動の場」という結語に繋がっていくわけです。

中世成立期については門外漢で誤解もあるかもしれませんが、本書の問題関心に触れて、今の私がつらつら考えていることについても色々と示唆を得ることができました。

4862151558中世的九州の形成
小川 弘和
高志書院 2016-03-10

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