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2017年8月

2017.08.16

【受贈】『交換・権力・文化』

桜井英治『交換・権力・文化―ひとつの日本中世社会論』(みすず書房、2017年)受贈。ありがとうございます。

待望の論文集、というべきでしょうか。中世後期日本を中心とした贈与の社会的・経済的意義については、一般向けに新書がすでに刊行されていますが、本書はそのベースとなった論文集といってよいでしょうか。

特に室町期に発達した贈与慣行について、頻繁に用いられた折紙(贈与する金品の目録)の機能に注目した論考や、16世紀にかけての貨幣流通の動向など、以後の研究に大きな影響を与えた内容が多く含まれています。1570年代の「びた」に関する新稿もあり、興味深く拝読しました。

さて、簡略ながら、読後に二つの点で自らの関心に副って思うところがありました。

まず一つ。筆者も触れているように、15世紀に折紙の贈与が盛行した背景の一つに、現銭の調達の困難さがあったことが想定されています。この点について思い当たるのは、この時代は為政者周辺で空前の活況を呈した一方、経済の潤滑化に欠かせない貨幣(銭)の供給はむしろ頭打ちになったと考えられるため、特に京都周辺で銭不足が慢性化しつつあった可能性が考えられることです。そうであるならば、折紙が流行ったのは、かかる事情からも説明できるのではないかな…などと思ったりしました。

もう一つは、新稿の1570年代の「びた」について。ここで筆者は先行研究における先進性を再発見しています。この点は私も反省を含めて改めて勉強になりました。その上で近年の議論について考えるのは、結局「びた」というのははじめから低銭(元々価値の低い銭)であったとの見解が最近は有力になりつつある、という点です。
この点について思い返すと、想起されるのは、グレシャムの法則(「悪貨は良貨を駆逐する」)が当時の貨幣経済に作動したかどうかという議論が戦前にあったことです。これまでの研究史では、グレシャムの法則が作動しなかったとする立場が定説となっていましたが、「びた」が低銭=悪貨だとするならば、この問題を改めて問い直す必要があるのかもしれません。

後者は本書の内容とすぐさま関わる内容ではないのですが、本書を通じて、改めて研究への示唆を得られました。(実際にこういう論点を今後掘り下げるかはわかりませんが…。)

4622086115交換・権力・文化――ひとつの日本中世社会論
桜井 英治
みすず書房 2017-06-10

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