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2018.08.20

【受贈】『戦国期の村落と領主権力』

銭静怡『戦国期の村落と領主権力』(吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

所属ゼミの後輩による論文集で、一書に研鑽した間柄として慶賀の至りです。基礎的な歴史的事実、史料読解、研究史をほぼ一から修得しなければならなかったことがあとがきにも記されていて、感慨深いところです。もっとも私は大して役には立っていませんが…。

さて、本書は後北条氏の小代官の位置づけをメインとする論考と、近江国菅浦において領主支配が浸透する戦国期の具体像について、それぞれ分析したものとなっています。

前者は、小代官は村落内における有力者(土豪)を出自とする者が多く、大名被官である代官とは異なる階層を基本としていたとします。もっとも、土豪には直接領主と被官関係を結ぶ者もおり、そのあり方は多様であったともいいます(このような「土豪」を「国人領主」と表現しているのは妥当なのか気になるところですが)。

一方後者は、菅浦は15世紀半ば頃を対象とした村落自治について常に注目されてきたものの、その後に徐々に武家領主が支配者として浸透する過程についてはあまり検討が深められていないとして、その様相を具体的に明らかにしようとしています。特に16世紀前半に浅井氏の支配が入ってくる過程においては、領主と村民との貸借関係(主には年貢未進分の転換)を媒介として領主権力が徐々に浸透していくものと捉えています。この点はもちろん研究史においても議論されたテーマで、それが地主的支配なのか、領主的支配なのかという議論もあったところです。本書では後者の立場を支持したものと理解できるでしょうか。

本書では、中世の自治的村落がそのまま近世の村請制へ繋がるという考え方とは少し距離を置いた論調になっており、本書の成果について今後議論が活発化することを期待しています。最近では中世史の側で中間層をテーマにした議論はやや落ち着いた感はしますが、重要なテーマであることは確かなので、起爆剤になるといいですね。

著者は今後どのような研究へと進んでいくのかはわかりませんが、研究そのもののみならず、文字通り国境をまたいだ研究の振興の面での活躍も期待しています。(私も微力ながら何かできればいいのですが。)

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