« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »

2019年5月

2019.05.28

【受贈】『戦国の城の一生』

竹井英文『戦国の城の一生―つくる・壊す・蘇る』(歴史文化ライブラリー475、吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

戦国時代の「城の一生」、つまり築城から整備、維持管理、そして廃城、はたまた復活(再利用)に至るまでの様子を、文献史料から具体的に復元しています。さすがというか、全国各地の城の事例を網羅的に検出し、興味深い事例を多く取り上げてわかりやすく城の実態について解説がほどこされています。

個人的に興味深かったのは、城の運用規定ともいえる「城掟」を網羅的に蒐集して分析しているところでした。私は「城掟」について詳しいことは知らなかったのですが、様々な規定を目にして、城の運用にとどまらず戦国期の社会事情が垣間見える内容も多いことがわかりました。今後の参考になりそうです。

城跡の実像については、発掘調査や縄張研究によっても大きく進展してきたわけですが、文献史料にも多くの論点を見いだせることがわかりました。歴史学においては、現在では異なる研究分野との協業が重要なテーマになっていますが(城郭研究の場合、地理学的な分析も視野に入るでしょう)、改めて文献史料に立ち返る重要性も学んだ気がします。

 

戦国の城の一生: つくる・壊す・蘇る (歴史文化ライブラリー)
竹井 英文
吉川弘文館
売り上げランキング: 222,719

2019.05.01

【受贈】『薩摩の密偵桐野利秋』

桐野作人『薩摩の密偵桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実』(NHK出版新書564、NHK出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

私は大学入学後に戦国期への関心が高まるとともに幕末維新期への興味が急速に薄れたため、恥ずかしながら知識がほとんどありません。私の幕末維新期の人物イメージといえば、大学入学前によく読んでいた司馬遼太郎の小説や、1990年のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」で止まっています。本書の主人公である桐野利秋(中村半次郎)についても、猪突猛進的な血の気が多い藩士の一人というイメージでいました。

本書は、そのようなイメージを覆す内容となっています。私の持つイメージは池波正太郎の小説『人斬り半次郎』が与えた影響のようですが、実際の桐野利秋は、幕末期には薩摩藩の密偵として各種の情報収取(そして時には暗殺)を行う役回りを担っており、しかもかなりの手柄を挙げたようでした。そのような役回りのためか、藩内外様々な人物と接触しており、かつそれが史料から復元できることに非常に興味深く感じました。さすが、19世紀後半ともなると、ここまで史料があるのかと感嘆します(もちろん、史料の博捜という大変な作業を経て読者はその恩恵を受けるわけですが)。幕末の政治史について近年の研究をしっかり追えているわけではなかったので、この辺りの詳細な叙述は大いに勉強になりました。

終盤の西南戦争の描写もドラマチックで、この辺りは事実を淡々と述べがちな研究書とは一線を画する醍醐味です。参考文献リストも充実しており、この時代の入門書としてもおすすめしたいです。

薩摩の密偵 桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実 (NHK出版新書 564)
桐野 作人
NHK出版
売り上げランキング: 244,401

« 2019年4月 | トップページ | 2019年6月 »