ガクシン=生活保護
おお、そうだったのか。
…まあ、これをあげつらうのは言いがかりかもしれませんが(もっとも、「とりまとめ」で書いていることからすれば、当事者にとっては「言い得て妙」と本気で思っていると考えられますが)、なかなか世知辛い状況になってますねえ。
まあ、ごく短時間で是非を議論するという背景からすれば、そういう言い分が出るのもまったく理解できないわけでもないです。ほかの科研費はあくまで研究経費として支出している一方、学振だけは生活費を支給しているわけで、性格はほかと異なっていますからねえ。それだけみれば、「なぜ国費で生活費まで出しているのか」と訝るのも無理はない話です。
とはいうものの、採用率を考えれば、到底「生活保護」という評価にはならないとは思いますけどねえ。端的にいえば、学振に当たらないポスドクの方が割合としてははるかに多いわけで、ポスドクの生活保護という性格で捉えるならば学振はまったく不十分な制度という評価になるはずです。
こういう評価を受けたのは文科省にも問題があって、「事業仕分け」に際して提出した資料を見るに、DCは採用率を記載していましたが、PDは記載していませんでした。そこが誤解を生んだ原因でしょう(ただ、PDにはたぶんCOE枠も含まれているので、単純に採用率を提示できなかったのかもしれませんが)。
もちろん利害関係者としては、単純に予算を減額するということに対しては承諾しがたいです。とはいえ、どれだけ研究成果を生み出しているかという点での「費用対効果」を検証せよという言い分ももっともという気もします。単にお役所だけではなく、研究者としてもこの辺が課題といえば課題だなあとは思いました。
ただし、とりわけ納得できない意見があります。「過去の政策のつけであるから少しずつ減らしていくしかない」というもの。誰が言ったのかはわかりませんが、これはあんまりでしょう。過去の政策のツケを払うのは政府(=国民全体)であって、ポスドクだけではないはずです(年金や医療に関する議論をみよ)。これだけは撤回していただきたいと思います。
もう一つは、「実社会から逃避して、大学に留まる人をいたずらに増やしてしまう」という意見。これも誰が言ったのかはわかりませんが、「実社会」って何ですか? 大学は「実社会」ではないんですか? もしかして、サラリーマン的な働き方だけが「実社会」って思ってますか? 多様な社会が尊重されるべきという風潮のなか、こんな偏狭な発言がフォーマルな場でまかり通るのには驚きです。
最近話題のネタですが、私はもろに利害関係者なので、話題として取り上げることに逡巡していたのですが、「+酒」で(笑)、とりあえずつらつらと思うがままに。
ともあれ、これからどうなるか注視したいところです。そして、最近はすっかり腰の重くなった学界も、これからどうすべきか考えてゆかねばならないように思いますね…(この辺は、今の私からはあまり踏み込んだことは言えないので(笑)、まあこんなところで)。
★参考資料(メモとして)
文科省の「事業仕分け」意見募集サイト
「事業仕分け」評価コメント
「事業仕分け」に関する署名のお願い by 京都大学文化人類学若手研究者有志
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