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2020.06.08

『戦国大名の経済学』を刊行します

17日に講談社現代新書『戦国大名の経済学』を刊行することになりました。

タイトルは「経済学」と付いていますが、経済学の理論について取り扱うわけではなく、戦国大名の収支を通して当時の経済について解説しようという趣旨です。
宣伝文にもありますが、本書では物の値段を具体的に紹介することがコンセプトの一つであったため、さしあたり史料を繰って見付けた事例を取り上げて紹介しています。しかし、これまで多くの研究が蓄積されている物価史研究に基づいた、厳密な物価の検証を行っているわけではありません。この点は物足りないと感じる方も多いだろうと思いますが、入門書としてご了解いただければと思います。

一般書として本を一冊書いたのは初めての経験で、それゆえ叙述に非常に苦労しまして、執筆開始からかなりの時間が掛かってしまいました。
多くの方に手に取っていただいて、戦国時代の経済について興味を持つ人が少しでも増えることを期待します。
宜しくお願いいたします。

2019.08.16

【受贈】『長篠合戦の史料学』

金子拓編『長篠合戦の史料学―いくさの記憶』(勉誠出版、2018年)受贈。ありがとうございます。これまでもいくつか成果をいただいておりますが、これも長篠合戦にまつわる合同研究に基づく成果の一つです。何度も言うのも恥ずかしいのですが、私はその末席に加えていただきながら、何も貢献できませんでした…。ただ、この調査に参加した際の記憶が、本書を通じて蘇ってきました。

 

さて、本書は、長篠合戦の経緯に深く切り込むというよりは、合戦後に様々な形で語り継がれてきた長篠合戦の「記憶」について、その過程を現代に至るまで実証的に分析する内容を主眼としています。文献では軍記物などがその主要な分析対象となり、各所に伝わる合戦図屏風といった絵画資料の分析も本書の重要な要素となっています(各屏風については、冒頭にカラー写真が収められています)。
以上の分析は非常に緻密であり、今後長篠合戦にまつわる記録・言説を勉強しようと思うならば、真っ先に本書が参照されることになるでしょう。

 

編者の金子さんが記す通り、本書のもとになった合同研究は、最終的には『大日本史料』の長篠合戦の巻(合戦だけで一冊になるそう)の編纂が目標になっているわけですが、『大日本史料』での史資料の編纂の前に、すでにそれらを用いた網羅的な研究が完成しつつあるように感じます。

 

長篠合戦の史料学―いくさの記憶

勉誠出版
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2019.07.20

【受贈】『中世武士畠山重忠』

清水亮『中世武士畠山重忠―秩父平氏の嫡流』(歴史文化ライブラリー477、吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

 

関東を出自とする中世武士団はあまた存在していましたが、中でも中核的かつ代表的な人物である畠山重忠の伝記を中心として、中世武士団の発生と展開過程を広く概説した一冊となっています。
中世武士は在地領主とも呼ばれますが、「草深き田舎」から生まれたとするかつての理解とは異なり、中央での武官などからなる「軍事貴族」がその起源であり、彼らが関東での治安維持(反乱平定)や災害復興などに携わることによって土着し、領主となっていったことが明らかにされてきました。本書では、多くの先行研究を踏まえて、その過程を具体的に解説しています。中世武士論の入門書として最新かつ最適な内容ではないかと思います。

 

一般向けということもあり、畠山重忠ら登場人物の心情を語るような叙述にも気を配っていて、その苦労を感じました。というのも、このような叙述を一次史料から抽出することは困難であることから、校正の編纂史料に概ね頼ることになるため、個々の事例の採否の判断が簡単ではないからです。機会があるかはわかりませんが、私も同種の書籍を執筆することがあれば、参考にしたく思います。

 

中世武士 畠山重忠: 秩父平氏の嫡流 (歴史文化ライブラリー)
清水 亮
吉川弘文館
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2019.06.24

【受贈】『鳥居強右衛門』

金子拓『鳥居強右衛門―語り継がれる武士の魂』(平凡社、2018年)受贈。ありがとうございます。

本書では、長篠合戦の際、武田方に捕縛されながら、長篠城に籠もる奥平氏の軍勢に向けて織田軍の援軍が来ることを伝え、「逆さ磔」にされたとされる人物として語り継がれている鳥居強右衛門や、「逆さ磔」をデザインにした旗(背旗)を作成し後世に伝えた落合左兵次とその子孫について検証しながら、「逆さ磔」の伝説が生まれた経緯やその後の変容を分析しています。
鳥居強右衛門は『甫庵信長記』や『三河物語』といった二次史料にみられる人物で、江戸時代初期からある程度名前を知られた人物だったようですが、出自がまったくわからない不思議な人物でもあります。なぜこのような人物が歴史に名を残したのかについても、詳しく説明されており、かつ説得的です。

その他あらゆる論証は緻密で、かつその過程をわかりやすく説明しており、内容はもとより、史料を駆使した分析の手法を学ぶためにも参考になる一冊となっているのではないかと思います。一方、長篠合戦の経緯についても最初に詳しく述べられていますが、この辺りの歴史に詳しくない人にとっては、読みこなすのは少し努力が必要かもしれません。

さて、その落合左兵次の実像をめぐる検証については、「恐るべき結論」(136頁)と自ら述べられているように、意外な結論に辿り着きます。また、「逆さ磔」として知られていますが、果たして「逆さ」だったかについても、現在に遺る旗を実際に分析して検証しています。

私はかつて科研等の調査でこの背旗について調査に立ち会わせていただいたことがあり、その時の記憶がただちに蘇ってきました。この科研では私は何も貢献が出来ずまことにお恥ずかしい限りなのですが、史料とモノに加え、伝説(由緒)の検証から新たな歴史像を解明する手法は、大いに勉強になりました。

 

鳥居強右衛門:語り継がれる武士の魂 (中世から近世へ)
金子 拓
平凡社
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2019.06.01

【受贈】『清須会議』

柴裕之『清須会議―秀吉天下取りへの調略戦』(シリーズ実像に迫る17、戎光祥出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

タイトルは清須会議ですが、会議自体は一瞬で終わるので(笑)、本能寺の変へ至る過程から織田信雄が死去するまでの織田・豊臣政権(と江戸幕府成立後)の政治情勢について、多くの図や写真などを交えながら解説した内容となっています。わかりやすく概説的に説明がされており、かつビジュアル面で充実しているので、初学者のみならず、おおまかな政治情勢について確認したい時などに有用な一冊ではないかと思います。

このシリーズの狙いでもあると思いますが、本書に登場する城跡や史跡の写真を見ると、その地を訪ね歩いてみたくなります。関連史跡をめぐる時に携行するのもよさそうです。

清須会議 秀吉天下取りへの調略戦 (シリーズ・実像に迫る17)
柴裕之
戎光祥出版 (2018-09-27)
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2019.05.28

【受贈】『戦国の城の一生』

竹井英文『戦国の城の一生―つくる・壊す・蘇る』(歴史文化ライブラリー475、吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

戦国時代の「城の一生」、つまり築城から整備、維持管理、そして廃城、はたまた復活(再利用)に至るまでの様子を、文献史料から具体的に復元しています。さすがというか、全国各地の城の事例を網羅的に検出し、興味深い事例を多く取り上げてわかりやすく城の実態について解説がほどこされています。

個人的に興味深かったのは、城の運用規定ともいえる「城掟」を網羅的に蒐集して分析しているところでした。私は「城掟」について詳しいことは知らなかったのですが、様々な規定を目にして、城の運用にとどまらず戦国期の社会事情が垣間見える内容も多いことがわかりました。今後の参考になりそうです。

城跡の実像については、発掘調査や縄張研究によっても大きく進展してきたわけですが、文献史料にも多くの論点を見いだせることがわかりました。歴史学においては、現在では異なる研究分野との協業が重要なテーマになっていますが(城郭研究の場合、地理学的な分析も視野に入るでしょう)、改めて文献史料に立ち返る重要性も学んだ気がします。

 

戦国の城の一生: つくる・壊す・蘇る (歴史文化ライブラリー)
竹井 英文
吉川弘文館
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2019.05.01

【受贈】『薩摩の密偵桐野利秋』

桐野作人『薩摩の密偵桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実』(NHK出版新書564、NHK出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

私は大学入学後に戦国期への関心が高まるとともに幕末維新期への興味が急速に薄れたため、恥ずかしながら知識がほとんどありません。私の幕末維新期の人物イメージといえば、大学入学前によく読んでいた司馬遼太郎の小説や、1990年のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」で止まっています。本書の主人公である桐野利秋(中村半次郎)についても、猪突猛進的な血の気が多い藩士の一人というイメージでいました。

本書は、そのようなイメージを覆す内容となっています。私の持つイメージは池波正太郎の小説『人斬り半次郎』が与えた影響のようですが、実際の桐野利秋は、幕末期には薩摩藩の密偵として各種の情報収取(そして時には暗殺)を行う役回りを担っており、しかもかなりの手柄を挙げたようでした。そのような役回りのためか、藩内外様々な人物と接触しており、かつそれが史料から復元できることに非常に興味深く感じました。さすが、19世紀後半ともなると、ここまで史料があるのかと感嘆します(もちろん、史料の博捜という大変な作業を経て読者はその恩恵を受けるわけですが)。幕末の政治史について近年の研究をしっかり追えているわけではなかったので、この辺りの詳細な叙述は大いに勉強になりました。

終盤の西南戦争の描写もドラマチックで、この辺りは事実を淡々と述べがちな研究書とは一線を画する醍醐味です。参考文献リストも充実しており、この時代の入門書としてもおすすめしたいです。

薩摩の密偵 桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実 (NHK出版新書 564)
桐野 作人
NHK出版
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2019.04.23

【受贈】『図説室町幕府』

丸山裕之『図説室町幕府』(戎光祥出版、2018年)受贈。ありがとうございます。

難しいことをわかりやすく書くことは難しい。特に専門家のレベルで議論となるような概念用語を一般向けにわかりやすく説明することは、かなりの労力を必要とします。そういう意味で、本書のように専門的な議論をわかりやすく解説した本は、非常に貴重なものといえるでしょう。

幕府の機構やそれぞれの部局の役割などが平明に解説されており、室町幕府の構造を初めて勉強しようと思う時には、入門書として最適ではないかと思います。内容も近年の研究成果を参照しており、また、参考文献も充実していて、大学で室町幕府について勉強しようと思う学生にとっては、まず参照すべきガイドブックとなるのではないかと思います。
ただ、無い物ねだりをするならば、15世紀までは内容が充実しているものの、16世紀に関する記述はかなり少なくなっているところでしょうか。室町幕府の最盛期を対象とするならば致し方ないところですが、戦国期の室町幕府を勉強しようと思うならば、参考文献を頼りに重ねて文献を探索することが求められます。
専門家としても、ちょっとした調べ物として有用なので、備えておくとよいのではないかと思いました。

 

図説 室町幕府
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丸山裕之
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2019.04.20

【受贈】『中世荘園村落の環境歴史学』

海老澤衷編『中世荘園村落の環境歴史学―東大寺領美濃国大井荘の研究』(吉川弘文館、2018年)受贈。ありがとうございます。

美濃国大井荘は奈良時代に東大寺が造営された時点からの東大寺領荘園として著名で、その経営は紆余曲折を経ながらも室町時代まで続いた稀有な荘園でした。加えて関連史料も多く遺されており、古代から中世にかけての荘園の推移をみる上で好個の対象としてこれまで多くの研究で取り上げられてきました。ただ、荘園制の議論は近年大きく進展してきたものの、新たな見解に応じた大井荘の再検討はまだ途上であったことから、本書ではその課題への取り組みが一つのテーマとなっています。

しかし、文書の分析に止まるものではなく、「環境歴史学」とあるように、科研調査を通じた現地調査や、近年進化してきたGISなどによる歴史地理における分析技術の活用を通じて、古代から中世にかけての荘域の復元を試みています。

その過程では現地における聞き取り調査や、実見による用水の復元など、分析手法も実に多岐にわたっており、荘園研究の現在を知る上で重要な一冊ではないかと思います。近年では大規模な現地調査に基づく中世史研究は様々な事情がありあまり行われなくなってきましたが、現地を歩くことの重要性を改めて認識させられました。

私がその方面でどこまで貢献できるかはわかりませんが、今後何らかの調査に貢献できる日が来ることを待ちたいと思います。

 

中世荘園村落の環境歴史学: 東大寺領美濃国大井荘の研究

吉川弘文館
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2019.04.04

【受贈】『古代・中世の地域社会』

大山喬平・三枝暁子編『古代・中世の地域社会―「ムラの戸籍簿」の可能性』(思文閣出版、2018年)を、三枝さんと執筆者のKさんの連名で受贈。ありがとうございます。

これまで数年にわたって、「ムラの戸籍簿」のタイトルで古代から中世にかけて地域社会で作成され継承されてきた史料の網羅的蒐集と分析が行われてきましたが、本書は現時点での集大成となるべきものといえるでしょうか。

本書が注目しているのは「村」や「郷」などの文言が史料上に登場する時期に関する検討で、登場する時期における各地の動向や、時代の変遷による「村」などの内実の変化を追っています。各論考は網羅的な史料蒐集と基礎的な分析で貫かれており、今後の地域社会研究の指針になる一冊という位置づけることができるでしょうか。

個人的には、播磨国宍粟郡の事例を分析した三枝さんの論考に興味を抱きました。というのも、学術的な理由ではなく、父親の出身地だからです(笑)。私のルーツとは関係ありませんが、当地の風景を思い出しながら拝読しました。

 

古代・中世の地域社会―「ムラの戸籍簿」の可能性―

思文閣出版 (2018-09-20)
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